白(ハク)とは? 意味や使い方

 佚名文
发布时间:2025-07-04 10:34

色名の一つ。日本工業規格(JIS)では,10種の有彩色,5種の無彩色の計15色名を基本色名として定めているが,白は無彩色の基本色名の一つである。無彩色だから明度(色の3属性の一つで,色の明るさを表す)によって規定され,白は明度10である。一般に光は,各波長に対する放射エネルギーの分布で種別されるが,白色光はどの波長に対しても放射エネルギーが等しい光で,天然には太陽光がほぼ白色光に相当する。

象徴としての白

白は闇に対する光,暗に対する明の色であり,黒の反対色である。しかし色のない色と解することによって,しばしば黒と同じ意味が与えられる。《(せつもんかいじ)》は白を西方の色とするがこれを東方の色とする民族も多い。一日の終わったあとの西空は白く,一日の始まる暁の東空は白い。白は一日の死と再生を表す色である。白は生命の色であるがまた喪色として使われることも多く,屍衣は一般に白色であり,また亡霊の衣も白である。他方白は無染の色であり,純潔を象徴し,結婚の衣装の色として用いられることが多い。また光明の色として聖なる者と結びつく。キリスト教では,〈キリストの変容〉に際してその衣は白く輝いたといわれるが(《マルコによる福音書》9:3ほか),《ヨハネの黙示録》にしばしば記されている神の姿は,その頭と髪の毛は白い羊毛に似て雪のように白く(1:14),ときには白雲に(14:14),白い玉座に(20:11),あるいは白馬に(19:11)乗った姿である。神の使者あるいは侍者である天使も通常白い衣をまとい,義人聖人もまた同じである。また神官も洋の東西を問わず多くは白衣である。大プリニウスは《博物誌》で,ケルトの祭司は白い衣をまとい白牛を犠牲にすると述べているが(16章,24章),白い鳥獣がしばしば聖なるものとされることは,白馬,白鳥(インドのハンサHansa),白蛇などで知られる。古代の上エジプトでは白禿鷹ネクベトが国王守護の役を担ったし,他方白の牝カバも礼拝された。中国では白虎(びやつこ)は四神の一として西方を守る聖獣とされた(《淮南子(えなんじ)》天文訓)。色彩象徴が複雑化したインドでは,白はときに応じてブラフマー神,シバ神の身色として用いられ,また仏教では,毘盧遮那仏(びるしやなぶつ)(大日如来)の身色は白とされ(とくに金剛界法),また白色の身光が多く用いられる。金剛界曼荼羅に見られる白円輪は〈月輪〉と称されるが,一般に尊像の身色や身光の白は,光明を表すものとして,むしろ太陽につながるものと思われる。
執筆者:柳 宗玄

日本文化と白

とくに日本人の場合には,昔から〈白い色〉に格別の意味をもたせる扱い方に執してきたと言えそうである。古代の民族信仰にあっては〈白〉は清浄・神聖の色とされたし,中国の制度文物を徹底的に模倣学習した律令国家体制確立時代にあっては〈白〉は動物と結びついて祥瑞を示す色とされ,平安王朝文学の世界にあっては〈白〉は梅花や衣服と結びついて優美さや上品さを表現する色とされ,さらに中世美学の世界にあっては〈白〉は余情幽玄や寂寥感を漂わせる色とされた。そこで,論者によっては,白こそ〈日本の色〉であると主張する人もいる。

 色名としてのシロについては,事物がはっきり見える意の〈しる(著,徴,験,顕)し〉と同語源とするのが,今日最も有力で,国語学者たちの定説にもなっている。いったい,古代日本語の色名のうち,本来的な色名はアカ(明ける意),クロ(暮れる意),シロ,アヲ(生ふ,あふぐから転じ,明るさのうすい漠たる感じをいう)の4種に限られ,あとの色名は植物染料の名か鉱物性顔料の名かに由来する。この定説を踏まえて考えるのに,シロは,あかい曙(あけぼの)の色が夜の明けるにつれてしだいに〈しろく〉なり,森羅万象が〈しるく〉識別されるようになり,事理を〈しる〉(知識)ことが可能になるまでの思考作用を包摂している。そうだとすれば,白の色が古代日本人の世界観もしくは形而上学と密接なかかわりをもっていたと想像しても,それほど見当違いにはならないだろう。古代人が,白い色に,超自然的な物事の道理や,人間以上の神秘な霊力を見いだし,これを呪術や宗教儀礼に不可分のものと考えたのは,むしろ当然だったといえる。《古事記》をみると,足柄の坂神が白鹿になったり,伊服岐(いぶき)の山神が白猪になったり,倭建(やまとたける)命が白智鳥(しろちどり)になったりする記事に出会うが,似たような記載は《日本書紀》や《風土記》にも幾つか見られる。

 しかし,古代日本人ならばだれしもおのずから白い色に神秘的な霊力を感じ取る心性を開発していたかと問えば,必ずしもそうとばかりは答えられない。というのは,記紀神話全体を検証すればわかるとおり,日本列島には早くから中国の陰陽五行思想が渡来し浸透していて,信仰形態から生活民俗に及ぶまで,一貫した思考的規準をなしていたからである。いま,シロのみに限定して考えると,五行の4番目に配当された金気は,色を白とし,方位を西とし,季節を秋とし,十二支では申・酉・戌の三支(万物が成熟して滅びに向かう象意)をあらわし,十干では庚・辛(草木が成熟して枯死し再新しようとする象意)をあらわしている。陰陽五行哲学の〈時間循環原理〉に従えば,ものごとが最高頂点に達し,滅び,さらに再誕生を準備する段階が〈金・白・西・秋〉だということになる。死者の霊魂は白くなければならないし,西に向かって飛び,やがて蘇生するものでなければならない。この陰陽五行思想が古代日本人の〈民族心性〉に結びついたと考えてもよいし,あるいは,陰陽五行思想のバリエーションの一つとして日本神話や民間信仰が発生したと考えてもよいが,どちらにしても,両者をまったく無関係のものと見ることはできない。ことに律令国家建設以後にあっては,為政者側で〈祥瑞〉の発見および報告を奨励するようになったから,この結びつきの補強に役だった。孝徳天皇白雉(はくち)元年(650)に穴戸(あなと)(長門)の国司が白雉(しろきぎす)を献上したとき,百済君(くだらのきみ)に質問したり《芸文類聚》登載記事を調べたりして,白鹿や白雀が出現したのは祥瑞だという結論を出し,寿詞(よごと)に〈陛下(きみ),清平(しずか)なる徳(いきおい)を以(も)て天下(あめのした)を治(しら)すが故に,爰(ここ)に白雉(しらききぎす),西の方より出づること有り〉うんぬんと唱えしめている。白雉改元の理由である。さらに天武天皇12年(683)正月の詔勅では〈伝(つて)に聞くならく,其(か)の天瑞(あまつみつ)は,政(まつりごと)を行ふ理(ことわり),天道(あめのみち)に協(かな)ふときには,応(こた)ふ〉と公示し,祥瑞の発見を促している。爾来,白鴈,白鷹,白烏,白燕,白雀,白鳩,白鵄,白鴟などが献上されるに至る。白亀,白鹿,白狐,白鼠なども献上され,かなり政治的に利用されるが,この段階では〈白い色〉に対する日本人の好みはもはや動かしがたいものになってしまっていた。
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執筆者:斎藤 正二

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